320197 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

今にも崩れ落ちそうな宿に引越しだ!

               ≪九月八日≫        -壱-



朝早く目が覚めた。


 快晴。


 このハウスは日本人が多く、非常に快適であるが不満な事が二つあ

る。


 一つは、街外れに位置している事(ビザを取る為には不便)。


 もうひとつは、宿泊代が高い。


 宿泊代の高いことに関してはガマンならん事なので、ここを出ること

に決めた。



  朝食を取って、ここで知り合ったおじさん達と別れを惜しん

だ。


     おじさん「えっ?もう出るの?どこかへ行くのかい?」


     俺   「いえ、ここは快適なんですけど、どうも宿泊代が

高すぎて・・・・・。」


     おじさん「高いって?一泊700円くらいじゃないか!」


     俺   「俺にはここは似合わないんです。あんまり快適な

生活をしていると、貧乏旅行がギリシャに到着す

るまでに挫折しそうで・・・・・怖いんです。」
     おじさん「なるほどね。でも無理しちゃあいけないよ。これ

から何処へ・・?」


     俺   「インドから中近東へ行こうと思ってます。」


     おじさん「そう。元気でね。」


     俺   「おじさん達も・・。」



  荷物を担いで外に出るともう日は高く、仕事に行く人、学校へ

通う子供達が日本と変らぬ風景を見せてくれている。


 街の中心に入ると、人も車の数も増えてくる。


 といっても、東京とはちがう。


 一国の首都ではあるが、どこか山岳の小さな町という印象はぬぐえな

い程小さな町なのだ。



空港で手に入れた地図を頼りに、”Stone Hause Loge”と言うホ

テルを見つけた。


 メインロードのすぐ近くの路地にある。


 五階建てなんですが、立派なホテルとはいえないほど、今にも崩れ落

ちて来そうなレンガを積んで造った宿だ。


 一階に事務所らしいところがあり、そこで二人の男達がのんびりとゲ

ームを楽しんでいるところだった。


 ゲームに熱中しているところに、悪いと思ったけど、こちらも担いで

いる荷物が重たくて思わず声をかけた。



     俺 「すみません!宿を借りたいのですけど、空いてま

すか?」


     彼 「何人だ?」


     俺 「俺一人ですけど・・・。」


     彼 「何日ぐらいだ?」


     俺 「一週間ほどですけど。」


     彼 「OK!じゃあここへサインして!」


 差し出されたノートにサインをする。


     彼 「一日4Rs(≒88円)だ!」


     俺 「サンキュウ!」



なんと驚くなかれ、一日90円の宿が見つかった。


 野宿以外ではここが一番の安宿であろう。


 部屋に案内される。


 狭いレンガを敷き詰めた、今にも崩れ落ちそうな(本当に落ちそうな

のだ。俺の田舎の祖谷のかずら橋を思わせるような怖さだ。)階段を何段

も上っていく。


 ”もっと下が良いのに。”


 なんと五階まで上がってきた。


 レンガの壁に挟まれて、古くなった木製のドアを開けると、四畳半ぐ

らいの狭い部屋に小さなベッドが二つ置いてあるだけの粗末な部屋だっ

た。


 小さな丸いテーブルと鏡と窓が一つある。



高所恐怖症の俺はそこに立ち尽くすして床をみると、なんと下の部

屋が見えるではないか。


 天井はなく、屋上の梁がそのまま見えている。


 今にも落ちてきそうなそんな怖さがあるのだ。


 壁もちょっともたれただけで、外へ崩れ落ちていきそうなそんな気が

するレンガだけの壁が周りを囲んでいる。



  少し落ち着いてくると、俺は次第にこの部屋が気に入ってき

た。


 俺にとっては”Express House”よりも相応しい宿である。


 部屋の鍵を渡され、荷物を置いて早速下へ下りて行く。


 階段の踏み板が落ちないよう、静かに足を運ぶ。


 事務所に貸し自転車がある。


     俺 「これ借りれるのか?」


     彼 「一日3Rs(70円)だ。」


     俺 「一台貸して欲しい。」


     彼 「OK!どれでも乗っていけ!」



                    *



  自転車にまたがると、カトマンズでの爽快な一日が始まった。


 地図を見ながら街外れにある・・・・と言ってもそんなに遠い所では

ない。


 何しろこのカトマンズの町は、この自転車が一台あれば、ゆっくりと

見て廻れるほど小さな町なんです。


 次に目指すインド大使館に向かう。


 もちろんビザ申請のために行くのだ。


 新しい国に入るとまず最初にしなくてはいけない仕事なのです。



自転車は快適に走る。


 メインの道から少し登った所に、インド大使館のオフィスはあった。


 中に入ると3、4人の先客がいた。


     俺  「ビザの申請に来たんですけど・・・。」


     事務員「これに書いて下さい。」


 一枚の申請用紙を渡してくれる。


 辞書もなく、英語で書かれた用紙に、大体こんなことを聞いているん

だろうと、大体の感じで埋めて行く。



  もうこれで五回目のことなので、だいぶん慣れてきたようだ。


 それでも今までになかった項目を二つ三つ見つけた。


 その一つが宗教だ。


 あんたの宗教はなんなのだという訳だ。


 これはタイで逢った日本人にレクチャーしていたので”仏教徒”と書

いて、難なくクリヤーする事が出来た。


 ”クリスチャン”か”仏教徒”と書いておけば間違いないようだ。



時間をかけて申請用紙に文字を埋めていると、一組の男女が入って

きた。


 日本人だ。


 俺と同じ目的らしくビザ申請用紙を受け取った。


     俺 「やー!こんにちわ。」


 少し言葉を交わしただけで、二人は申請用紙に集中し始めた。


 申請用紙の写真は三枚。


 (これは日本から用意してきていた写真を使用。用意が良いでし

ょ。)


 申請手数料は25.5Rs(580円)。


 ほぼ一週間分の宿泊代に相当する。


 とにかくここからの国は、宿泊代よりこういった申請手数料費とか通

信費(切手代)がバカにならないから困る。


     事務員「明日もう一度来て下さい!それまでに作って置きま

すから。」


     俺  「明日の何時頃ですか?」


     事務員「今頃です。OK!?」


 にこりと笑った。



インド大使館を出て広い道路に出る。


 そこを左に折れる。


 ちょっとしたサイクリングコースだ。


 今にも崩れ落ちそうな家並みを横目に見ながら、軽快にペダルをこ

ぐ。


 ”KANTI PATH”通りだ。


 右手に大きな広場が広がっている。


 長い急な坂道にかかる。


 坂道を登り切ったかなと言う所に日本大使館が左に見えてきた。



崩れ落ちそうな建物と違い、なかなか立派な建物だ。


 もちろん日本国民の税金で建てられている。


 そこで働いている人も、もちろん日本国民の税金で養われている。


 公務員はそのことを一時たりとも忘れてはならない。


 カトマンズの街外れに、各国の大使館があるようだ。


 中に入るが、事務員もそれらしき人も・・・誰もいない?


 誰が来ても手紙や新聞は見られるようにしているのだが、九月に入っ

ての新聞は見当たらず俺宛の手紙も来てなかった。


 予想していた事とは言え、チョッピリ残念である。


 それのしても、二三日前の新聞くらい置いとけよ。


 日本国民の税金で買っているのに、なぜ俺達に見せないのだ。


 くそったれ公務員達!



Uターンして街に戻り、中華レストランで食事を取ることにした。


 14Rs(320円)。


 (何を食ったか憶えていない。)


 自転車で街中を走り回ったせいか、部屋に戻ってからはベッドに横た

わったまま身動きできない。


 旅の疲れからかそのまま夕方まで眠ったようだ。


 三時間ぐらい眠っていたのか、目を覚ました時窓の外を見ると雨が落

ちている。


 スコールだ。


 それも見ているうちに上がってしまった。


 あれだけ暗かった空が見る見る明るさを取り戻してくる。


 辺りの山々がスコールに洗われて、くっきりとした緑を見せてくれて

いる。



夕方5:30頃、夕食と散歩を兼ねて外に出る。


 ロッジを出て左に行くとすぐ”GANGA PATH NEW ROAD”と言う比較

的広い道に突当たる。


 そこを右に。


 道は人と車で溢れている。


 車を見ると皆、道路の真ん中に駐車していて、その両横を車が走って

いると言う奇妙な、この国では当たり前の道路交通法にぶつかってしまっ

た。


 なんともおかしな・・・・・・でも?この方が理にかなっているのか

な?



広場に突当たり、左に折れると観光客相手の店が建ち並んでいるの

が見える。


 そんな中にレストランも数軒ある。


 その中の一つ”New Golden Dragon”と言うレストランに入る。


 中はタバコの煙が立ち込め、人息でムッとしていた。


 空席のテーブルを見つけて座る。


 照明がうすく暗い。


 客は少しばかりの日本人と数人の地元の人たち、そして多いのが毛唐

たち。



店に流れている音楽は英語のものばかりだ。


 目を閉じるとここがネパールだという事を忘れさせてくれそうだ。



     ≪New Golden Dragon Restaurant≫


         住所:Jhochhen Tole Kathmandu



レストラン・メニューをここで紹介しておこう。



      Soup         2.5~4.5Rs  55~100円


        Chicken       4.5~8.0Rs  100~180円


        Prawn Pishes    7.0~8.0Rs  150~180円


        Pork Pishes     4.0~4.5Rs  90~100円


        ベジタブル Pishes  1.5~3.0Rs  35~70円


        Hot 飲み物     0.85~4.0Rs  20~90円


        Cold 飲み物     0.75~3.0Rs  17~70円


        コーラ        2.5Rs     56円



これでボリュームたっぷりの食事が出来る。


 味も日本人に合っていて美味しい。


 それでもコーラだけは何処の国に言っても高価な飲み物だ。


 それでもどんな貧しい国にも浸透しているのだからたいしたものだと

言わざるを得ないようだ。


 レストランの給しは全て、地元の14~15歳だろうと思われるような男

の子達が受け持っているのか、テーブルの合間を縫うようにして料理を運

んでいる。



料理は口に合うし、サービスは良いし、おまけに安いときているか

ら、嬉しくなってくる。


 ただし、衛生上の保証はしかねるので、お間違いないようお願いした

い。


 水は一度必ず沸騰したものでないと口には出来ないようだ。


© Rakuten Group, Inc.